2013/01/15

十三夜




「荒川を渡るときは、必ず右側を見てね。綺麗な月が見えるから」

バカだなあ。
月は常に同じ場所に居座っているわけではない。
車が向かう方角でも、季節でも、日付でも、時間でも、月の位置は変わるんだよ。
大きな満月、青い月、赤い月、明星と月の笑顔、笠をかぶった月、
そして流星も、いちいち隣の君に教えられた。
運転中で横を向けないと言っても聞かない。

その前に、僕は月星になぞ興味はないのに。
その習慣は僕に残っている。
今でも荒川を渡るときは、右側を見てしまう。

君は、もう居ないというのに。



◇ -------------end------------- ◇

0 件のコメント:

コメントを投稿